丸林良嗣,
三重県工業研究所 研究報告 No.39, 97-101(2015),
Survey of Research and Development on Next-Generation Secondary Battery
-Magnesium Ion Secondary Battery-,
Ryoji MARUBAYASHI,
Key words: Next-Generation Secondary Battery, Multivalent Ion Battery, Magnesium Ion Secondary
Battery,
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000417091.pdf
【概要】
Mg イオン電池を中心にした次世代二次電池の研究開発動向調査。次世代自自電池の特徴・課題等に関して,非常に良くまとめられており大変参考となる。
やはり,次世代二次電池開発のターゲットは,車載用途であり,そういう観点からは,リチウムイオン二次電池に代わる,金属イオン二次電池ということになる。
(これに対して,私たちは,安全性,フレキシブル,折り曲げ時の動作安定性,軽さ,薄さ,といった,ウェアラブル電子デバイス用途等の,別の価値観からの二次電池の研究開発を考えていきたいと,現時点では考えております。また,トリリオンセンサー時代の電源として,ワイヤレス給電特性の優れたエナジーストレージデバイスを目標としています。酸化還元反応だけにもとづく二次電池では,自然エネルギー源による微小な電圧変化や電流変化で充電を行うことは困難なので,放電電圧が一定な電気二重層キャパシタ的な新しいジャンル?のエナジーストレージデバイスを考えています。)
しかし,やはり今,社会的に求められているのは,リチウムイオン二次電池に代わる,金属イオン二次電池ということになると思われる。
文献では,
表1 に,次世代二次電池の特徴・課題,がまとめられていて,Mgイオン二次電池,に関しては,
電池構成(例)
正極:酸化物、硫化物
負極:Mg金属、Mg合金
電解液:非水系液体
特徴・利点
・Liよりも体積当たりの電気容量が大きい
・金属Mgの融点がLiよりも高く安全性が高い
・金属Mgを負極に使用できる
課題
・多価であることから固相内で拡散しにくい
・金属表面に不動態被膜が形成されることから溶解・析出反応が阻害される
とされていたが,それらは,現時点においても当てはまることと思われる。
多価イオン二次電池
「資源確保,低コスト化の観点からは,Li を使わない高容量二次電池が求められており,その代表的なものとしてクラーク数の高い,Mg,Ca,Alなどが電池材料として有望である.表2 にその物性値の比較を示す.LIB では充放電の際に1 原子あたり1 電子が反応に寄与するが,多価イオン電池の場合1 原子あたり2 または3 電子が反応に寄与するため単純に電気容量は2 または3 倍となる.しかし,一般にアニオンとの相互作用が大きくイオンの吸脱着は起こりにくいというデメリットがある.」
「エネルギー密度の観点からは,電池パックの限られた容積にどの程度のエネルギーを充填できるかを比較すると体積当たりの電気容量がLi の2,062 mAh/cm3 に対して,Mg,Ca,Al でそれぞれ, 3,832 mAh/cm3 , 2,073 mAh/cm3 , 8,043mAh/cm3 であり,Mg で約2 倍,Al においては約4 倍となり,これは大きなメリットとなりえる.しかしながら,標準酸化還元電位は,Li に比べてMg,Ca,Al でそれぞれ,+0.7 V,+0.3 V,+1.5 V と貴になり,電池電位という意味では優位性は失われてしまう.」
と,多価イオン二次電池の利点と課題が述べられている。
「これまでに,Mg 金属負極を用いたMg イオン電池の電極材料としては,種々の検討がなされており,その一例を表3 に示す.酸化物では,V2O5系,MnO2 系,MoO3 系,硫化物では,Mo6S8 系などが研究されており,電気容量が600 mAh/g を示す報告もあるが,その平均電位は1.1 V 程度であり,そのサイクル特性にも課題がある.」
まとめとして,
「今後,車載用や貯蔵用を含めた大型用途の二次電池への要求が益々強くなっていくことが予想される.それらの研究開発にあたっては,エネルギー密度など性能面だけでなく,資源的な問題,コストの問題,安全性の問題などが重要視されるが,Mg イオン電池はこれらの問題を解決できる可能性のある電池として有望であると考えられる.」
とのべられていた。