東京理科大学・プレスリリース(2022.7.27)
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20220721_0325.html
【概要】
「東京理科大学理学部第一部応用化学科の貞清正彰講師、同大大学院理学研究科化学専攻の吉田悠人大学院生(研究当時)らの研究グループは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻の山田鉄兵教授、北海道大学触媒科学研究所の清水研一教授、同研究所の鳥屋尾隆助教らと共同で、これまでで最も高いイオン伝導性を示す新たな固体マグネシウムイオン伝導体の開発に成功し、二次電池の電解質として必要とされる実用的なイオン伝導度である約10–3 S cm–1のイオン伝導度を室温で達成しました。本研究により、ナノメートルサイズの小さな空隙(ナノ細孔)を有する多孔性の固体である配位高分子をイオン伝導経路として活用することで、固体中では流れにくいイオンであることが知られていたマグネシウムイオンを効率的に伝播することが可能であることを明らかにしました。」
と報告されている。
↑電解質は,以前から特許文献・非特許文献でマグネシウム二次電池用に用いられてきている
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドマグネシウム(II) を,
配位高分子のナノ細孔内に導入した化合物,とすることで,高いイオン導電性を得ている。
「合成した試料は室温(25℃)・アセトニトリル蒸気下で1.9 × 10–3 S cm–1のイオン伝導度を示すことを明らかにしました。これは、これまでに報告されているマグネシウムイオンを含有する全ての結晶性固体の中で、最も高いイオン伝導度」
と報告されている。
その機構としては,
「アセトニトリル蒸気下では、ゲスト分子としてアセトニトリル分子が配位高分子の細孔内に吸着され、これらがマグネシウムイオンに配位することで移動度の高い配位性のイオンキャリアを生じることが、高マグネシウムイオン伝導性発現の要因である」
とされている。
↑アセトニトリル等の,ゲスト分子の構造によっって,イオン電導度が大きく変化するという,非常に興味深い結果となっている。
アセトニトリル蒸気下でのイオン電導度であるので,実際の二次電池応用の場合のパッケージング等は気になるところではある。
多価の陽イオンは拡散性が低い点が課題となっているが,これは電荷密度が高いことでイオン半径が大きいことや,物理的な架橋構造を形成しやすいことに起因しており,この問題を,「固体中の構造やイオンの周りの環境の設計で解決できる」可能性を示した優れた研究成果となっている。
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