マグネシウムとヨウ素を用いた 二次電池開発

 

福島県立福島高等学校

岡部 和,松本大和,松田汐良,飯塚遥生

まてりあ 61 (3), 172-173, 2022-03-01,

公益社団法人 日本金属学会

スポットライト

~第 6 回「高校生・高専学生ポスター発表」優秀賞~

(2021年11月30日受理)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia/61/3/61_172/_pdf/-char/ja

https://cir.nii.ac.jp/crid/1390573242447949056

DOI: 10.2320/materia.61.172 

 

【概要】

 

本研究では,まず一次電池だったものを二次電池にすることを目標に研究を始めました.」

という明確な目的を持っての研究発表となっています。

 

↓実験条件は,以下のようにされています。

 

「負極:金属マグネシウム

正極:炭素棒

負極室溶媒:炭酸ジエチル(DEC)と炭酸エチレン(EC)を等しい体積比で混合させた溶液(50 vol% DEC, 50 vol% EC) (以下,混合溶液 A)にヨウ化カリウムを 0.30 mol/Lになるように溶かしたもの

正極室溶媒: 混合溶液 A(40 mL)にヨウ化カリウム(0.12 g)とヨウ素(1.5 g)を溶かしたもの

負極室溶媒と正極室溶媒とをつなぐ塩橋:混合溶液 A(2.5 mL)にヨウ化カリウム(0.12 g)を溶かし,ゲル化剤(N-カルボベンゾキシ-L-イソロイシルアミノオクタデカン)で固めたものを使用」

 

「このとき電流をほとんど流さない状態で測った起電力が 1.67V,1000 Q の抵抗につないだ時の電圧(以下,端子電圧)が0.67 V,電流は計測不可能(0.1 mA 未満)でした(この時の値は二電極法で計測しました).内部抵抗を改善するために塩橋の断面積を拡大させたり,溶媒にアルゴンバブリングを施したりと改良を加え,起電力 2.09 V,端子電圧 1.38 V,電流 1.3 mA を記録」

しかし,この段階の課題は,充電ができないこと,まだ内部抵抗が大きいこと」

 

↑非常に示唆に富む結果が報告されています。

 

二次電池として動作させるため,以下の3点の検討が行われ,二次電池的な充放電特性を示すことが明らかにされています。

 

(1) 「正極室に電圧を加えたときに電子を離すものが必要となりますが,私たちは塩化物イオンに注目し,塩素ガスを直接正極溶媒中にバブリングし,ヨウ化物イオンを酸化させることで,塩化物イオンを生成しました.」

 

(2) 「次に私たちは,端子電圧を上げる工夫を考察しました.1 つ目は支持電解質についての検討です.カリウムイオンを除去することを目的に支持電解質をヨウ化カリウムから塩化マグネシウム無水物に変えて実験を行いました.カリウムイオン除去の理由は,マグネシウムよりもイオン化傾向が高いカリウムが負極溶媒室にイオン化していると,マグネシウムがイオン化しにくくなると考えたためです.]

 

(3) 「塩橋材料としては極性が高く,難電気分解性であるものが適しています.この 2 つの特徴を満たす,イオン液体に私たちは着目しました.そのイオン液体として,私たちは 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートを使い,それを固めることのできるゲル化剤(2),N-(L-a-アスパルチル)-L-フェニルアラニン-1-メチルエステルを使いました。」

 

↑非常にチャレンジングな研究活動と柔軟な発想に,脱帽いたしました。

これだけの発想力と創造性を持った高校生の方々の能力を最大限に生かすことのできるように,十分な電気化学測定機器類を寄贈しようという財団,民間企業,あるいは公的機関があってしかるべき,と思うのは私だけでしょうか?

 

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