特開2013-037993,
出願人:株式会社豊田中央研究所,
【概要】
「ハロゲンを含むイオン伝導媒体を用いたものにおいて、高い放電電圧を維持できる非水系マグネシウム電池を提供する。」ことが課題されている。
解決手段は,
「水系マグネシウム電池10は、マグネシウム金属からなる負極14と正極16とをイオン伝導媒体18を介して対向して配置したものである。このうち、正極16は、導電材16bやバインダ16cを混合したあと白金メッシュなどの集電体16aにプレス成形して作製されている。また、イオン伝導媒体18は、マグネシウムパークロレート等のマグネシウム塩、ハロゲン、非水系溶媒を含むものである。このイオン伝導媒体18において、非水系溶媒は、ハロゲンと分子錯体を形成する化合物である。」
とされている。
↑一次電池,二次電池の区別に関する記載はないが,実施例から判断すれば,
非水系(液体電解質系)のマグネシウム一次電池になっている。
発明者らは,以前に,
「負極にマグネシウムを用い、ハロゲンを添加したカーボネート系の非水電解質を用いて電池を作製したところ、大容量且つ高出力とすることができた(特許文献9)。」と報告している。
↑上記の電池も,
非水系(液体電解質系)のマグネシウム一次電池と判断できる。
マグネシウム電池としては,
マグネシウムーハロゲン電池
マグネシウムー空気電池
マグネシウムイオン電池
の構成とした実施例が示されている。
「イオン伝導媒体において、支持塩は、特に限定されるものではないが、例えば、マグネシウムパークロレート(Mg(ClO4)2)、マグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Mg[N(CF3SO3)2]2)、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(Mg(CF3SO3)2)、マグネシウムノナフルオロブタンスルホネート(Mg(C4F9SO3)2)などの公知の支持塩を用いることができる。このような支持塩を含むイオン伝導媒体は、マグネシウムイオンを含むこととなる。」
↓特許文献9で課題となったのは,以下の点であった。
「 しかしながら、特許文献9に記載の電池では、大容量且つ高出力とすることができるが、初期の放電電圧が低いことや、放電に伴い放電電圧が低下することがあった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ハロゲンを含むイオン伝導媒体を用いたものにおいて、高い放電電圧を維持することのできる非水系マグネシウム電池を提供することを主目的とする。」
↓この発明の骨子は,以下になる。
「上述した目的を達成するために、本発明者らは、イオン伝導媒体としてハロゲンの他にこのハロゲンと分子錯体を形成する非水系溶媒を含むものを用いたところ、高い放電電圧を維持することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。」
↓ハロゲンと分子錯体を形成するとしては,
「硫黄と酸素との二重結合を1以上有する含硫黄有機化合物、リンと酸素との二重結合を1以上有する含リン有機化合物、炭素と窒素との三重結合を1以上有する含窒素有機化合物からなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする。」
とされている。
↓高い放電容量を維持できる理由としては、
「本発明の構成とすることで、Mg負極表面の不動態被膜の主成分であるMgOの分解が起こるためと推察された。
・・・
このことから、MgOの分解が起こるにはハロゲンが必要であることがわかった。また、ヨウ素を加えたものであっても、プロピレンカーボネートを用いた参考例7では、試液の色が赤褐色のまま変化せず、試液中に溶解したMg量が0.2μg/g未満であり、MgOを分解して溶解する効果がほとんどないことが確認された。ここで、プロピレンカーボネートはハロゲンと分子錯体を形成する能力があると考えられるが、その能力が低いため、効果が得られなかったと考えられる。このことから、非水系溶媒は、ハロゲンとの間で分子錯体を形成するだけでなく、分子錯体を形成する能力が高いもの、具体的には、硫黄と酸素との二重結合を1以上有する含硫黄有機化合物、リンと酸素との二重結合を1以上有する含リン有機化合物、炭素と窒素との三重結合を1以上有する含窒素有機化合物のいずれか1以上である必要があることがわかった」
実施例から判断すれば,マグネシウムイオン電池の特性は芳しくなく,マグネシウムーハロゲン電池において,放電電圧の改善が示されている。
請求項は3項で,すべて非水系マグネシウム電池に関するクレームとなっている。
論理式:[電池/CL]*[マグネシウム/CL]*[ヨウ素/CL]