多価カチオンを利用した 新型蓄電デバイス開発に向けた基礎的研究

 

李弘毅*, 下川航平**,岡本範彦*, 市坪哲 *

(*東北大学金属材料研究所,**東北大学学際科学フロンティア)

 

ま て り あ,Materia Japan

59, 8, 413- 421 (2020)

 

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia/59/8/59_413/_article/-char/ja/,

https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia/59/8/59_413/_pdf/-char/ja,

 

LiイオンとMgイオンの炭素材料へのインターカレーション特性の違いについての情報が必要となり検索。

 

Liイオン電池(LIB)の場合↓

 

一般に,Li-ion 電池は正極(Cathode)に遷移金属複合酸化物(例えばLiCoO2),負極(Anode)に炭素系材料(主にグラファイト)を活物質として使用している.図1(a)に示すように,正極・負極における電荷担体(以下,キャリアと称す.この場合キャリアはLi+ イオン)の挿入・脱離がいわゆるインターカレーション機構によりLi-ion 電池の電極反応が起こる.電極活物質はキャリアを収容する「ホスト」であり,キャリアの脱挿入に伴う体積変化が少ないと,構造安定性が高く,サイクル寿命も長くなる傾向がある.充放電過程においては,Li+ イオンは正極・負極間を行き来し,電解液は,単にLi+ イオンの伝導パスとして機能するため,キャリアイオンの濃度や組成変化がほとんど生じない.このような電池構造は「ロッキングチェア型」とよばれ,電解液の量を最小限に減らすことができるため,高いエネルギー密度を得ることができる.逆に,電解液は非常に量が少ないため,高い化学安定性が求められる.

 

↑”電解液の量を最小限に減らすことができるため,高いエネルギー密度を得ることができる.”の部分,図5で説明されているが,カウンターアニオンの影響含めて,異分野のものには把握が難しかった。

 

「負極電位および容量の観点からは,Li 金属(3861 mAh/ gLi )はグラファイト(340 mAh/gLiC6)より10倍以上の容量を有し,前者を負極活物質として利用することが最も好ましい.しかし,充電の際に,負極上においてLi 金属のデンドライト状析出が起こり,電池の内部短絡を引き起こすという問題がある.そのため,現状の電解液を用いたセルではLi 金属負極の実用化は困難であり,Li+ イオンのインターカレーション反応を利用したグラファイト負極が実際に利用されている.

 

Mgイオン電池(多価イオン電池の場合)↓

 

多価イオン金属は,充電時にデンドライト電析が起こりにくい傾向があるため,ポストLiion 電池の候補として,多価カチオン電池研究が盛んに行われている.多価カチオン電池は,一般に,負極に金属負極そのものを利用し,正極に多価カチオンが挿入・脱離されるホスト材料が想定されている.金属負極の使用によって高い容量を得られる上,Li-ion 電池同様のロッキングチェア型の電池構造を実現できる。」

 

↑”多価イオン金属は,充電時にデンドライト電析が起こりにくい傾向があるため”の部分,他の論文・総説でもそのような説明となっている。それに対して以下の資料では,デンドライト析出が多価イオン電池の課題の一つとされていて混乱。どちらかというと経済よりのレポートだからだろうか。

この総説では,図6で,Li金属負極とLi-Mgデュアルカチオン電池電極の充電後のSEM像を比較して示していて,後者ではデンドライトの生成は劇的に小さくなっている。

 

蓄電池技術はどこに向かうのか? 技術動向レポート

https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2019/mhir18_battery_05.html

”多価イオン電池:また同様に、アルミニウム、鉄、亜鉛といった多価金属を用いた蓄電池も、理論的には可能性はあるが、マグネシウムと同様にデンドライト析出によるサイクル寿命の課題が大きい。”

 

Li,Mg,Zn やNa,Ca はそれぞれイオン半径が近いものの,価数が異なるために多価カチオンの電荷密度は顕著に大きくなる.そのため,一価カチオンと比べて,多価カチオンにおいては正極活物質内や電解液中におけるイオン伝導や(脱溶媒和などの)界面移動過程における活性化エネルギーが大きくなる.また,特に正極材料においては,カチオンの挿入・脱離に伴う電荷補償によって,ホストの遷移金属元素の電子状態が大きく変わるため,ホスト構造の安定性も課題になっている.」

 

Li-ion 電池の場合,前述のように負極上のSEI 被膜は高いLi+ イオン伝導性を有するため,安定な電極反応は可能である.一方,Mg2+ などの多価カチオンはクーロン束縛が強く,被膜をイオン伝導で通り抜けることが難しい(つまり不働態膜になる)ので,多価カチオンの析出・溶解に高い過電圧が必要となる.

 

「Solid Electrolyte Interphase (SEI)と呼ばれる被膜によって過剰な分解が抑制され,負極と電解液が守られる」

 

↑このSEIが,マグネシウム二次電池では低イオン導電性であり,また,LIBに比べて厚くなりやすいことが,充電から放電に切り替わったときのIRドロップの大きさに影響してくるということですね。K氏は,あるポイントで不働態膜が破られると一気に放電電流が流れだす,ということ言っていた。Mg負極が全面不動態膜で覆われてしまわないような,電流が流れだす切っ掛けとなる点を多数有したハイブリッド型の電極構造はできないものだろうか?二次元平面視で見て,異種材料のハイブリッド構造となっているような電極。

私たちの検討している系における,金属ーカーボンハイブリッド型電極は,そういった電極構造の一つとも考えられるだろうか?

https://www.lpd-lab.com/mg-battery/mg-site/7/

 

 

「ダニエル型電池, Cu-Zn 電池に由来し,正極と負極がそれぞれ異なるキャリアイオンが反応を担う電池構造がその特徴」

 ↓

私たちが検討を行っている「マグネシウムヨウ素イオン二次電池」は,「ダニエル型」であって,

イオン種が正極・負極間を行き来する「ロッキングチェア型」ではない

という理解でよいだろうか。

金属ーハロゲン二次電池全般も,「ダニエル型」という分類になるのだろうか。

 

LiイオンおよびMgイオンのイオン半径は,それぞれ,0.59および0.57Åと,ほぼ同サイズではあるが,多価であるが故の電荷密度の違いが種々の課題を引き起こしているという理解で良いだろうか。

 「ダニエル型」は,キャリア濃度の劇的な変化を避けるため,必要とする電解液量が多く,その結果として電池エネルギー密度が低下してしまう”という点,非液体電解質でも同様な考え方だろうか。この電解液量のところ,カウンターアニオンの影響含めて,まだ把握できていない。模式図によって感覚的にはにはそうなのかもしれないとは思われるのだが,具体例が欲しいところだった。

 

 

 

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