全固体型アルミニウム空気二次電池 No.2 (β版)

本年は,レアメタルフリーの二次電池を目指して,アルミニウムーヨウ素イオン二次電池等の研究開発にチャレンジしたく思っており,そのための情報検索のβ版です。

アルミニウム二次電池でWeb検索しますと,冨士色素株式会社さん関連の情報が多々出てきました。

 

 

(6) A new structured aluminium–air secondary battery with a ceramic aluminium ion conductor

 

 Ryohei Mori, RSC Adv., 3, 11547–11551 (2013)

http://www.fuji-pigment.co.jp/Aluminum-Air-Battery.pdf

 

 DOI: 10.1039/c3ra42211a

 https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2013/ra/c3ra42211a

 

 

 ■アルミニウムー空気二次電池の課題

 

アルミニウムは,開回路状態や放電における自己腐食性が高く,これまでは,アルミニウム合金や電解液組成の面からの解決が図られてきたが,アノードおよびカソードでのAl2O3 and Al(OH)3等の 副生成物のために,アルミニウムー空気二次電池の商品化には至っていなかった。

 

 ■著者らが提案したアルミニウムー空気二次電池の構造

 

 ・著者らは,アルミニウム・アノードと空気カソードとを,セラミックアルミニウムイオン伝導体タングステン酸アルミニウム  Al2(WO4)3)で覆い、アルミニウムイオン伝導性を維持しながら、電解液(アルカリ電解質)との直接接触による腐食を防ぐことを提案している

 

Al–air セルの構造として,以下の3種の比較が行われている。

 

(a) aluminium anode + air cathode (AAセル構造),

 

(b) aluminium anode + Al2(WO4)3 film + air cathode (AFAセル構造)

 

著者らがこの論文で提案している構造:

(c) aluminium anode + Al2(WO4)3 film + Al2(WO4)3 lid + air cathode  (AFLAセル構造)

 

 

電解液は,NaOH水溶液。

(この時点では,Webニュースのような”全固体型”とはされていない。)

 

 Al | Al2(WO4)3 | NaOH | Al2(WO4)3

 

ここで,Alアノード側のアルミニウムイオン伝導体Al2(WO4)3は薄膜状で,厚さ10–20 μm,

air カソード側のアルミニウムイオン伝導体Al2(WO4)3は,約2mmと厚く,

著者らはこれを,lid(蓋)と呼んでいる。

(電解液の蒸発を防ぐための”蓋”という意味があると思われる)

 

 ■アルミニウムー空気二次電池の充放電反応

 

放電時のアルミニウムアノード側の反応

 

放電時のairカソード側の反応

放電時のAl-airセルの全反応は,

 

これに伴い,水酸化アルミニウムの沈殿が起こる。

副生成物であるAl(OH)3やAl2O3 の生成は,セルの充放電反応を妨げる主原因となる。

 

 ■アルミニウムー空気二次電池の充放電特性

 

・AFLAセルの容量は,6.9 mAh/cm2で,

AA セル(17mAh/cm2)およびAFAセル(18.9mAh/cm2)よりも小さい。

Nuyquistプロットの結果からは,AFLAセルでのセル抵抗の増加がみられ,

これは,アルミニウムイオン伝導体Al2(WO4)3が約2mmと厚いためであると考えられる。

そのため,AFLAセルの容量は,AAおよびAFAせる

(しかし,以下のようにサイクル特性が良い。)

面積当たりの容量となっているが,アルミニウム電極の厚さが不明なので,

mAh/cm3あるいはmAh/gとして他金属二次電池との比較はできない。)

 

・0.2 mA/cm2での定電流下でのAFLAセル充放電特性測定。

(Fig.3からは,1日に約4サイクルなので,充電3時間放電3時間の実験条件と思われる。)

(充電カットオフ電圧:約2.0V,放電カットオフ電圧:約0.8V)

AFLAセルでは,約1週間の充放電サイクルが可能で,これは知り得る限り,これまでで最長。

しかし,電解質溶液の蒸発が起こるため,2日に一度,NaOH水溶液を補充する必要があった。

・サイクル数の増加に伴う容量の変化は,

1サイクル目:5.3 mAh/cm2,10サイクル目:5.0 mAh/cm2,30サイクル目:4.4 mAh/cm2

であり,顕著な劣化はなかった。

 

 ■Summary

AFLAセル構造, Al | Al2(WO4)3 | NaOH | Al2(WO4)3によって,

これまでの報告のなかで最も長い,約1週間の動作が可能だった。

 

 

 

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(7) A novel aluminium–air secondary battery with longterm stability

 

 Ryohei Mori, RSC Adv.,  4, 1982-1987 (2014).

http://www.fuji-pigment.co.jp/Aluminum-Air-Battery-2.pdf

 

DOI: 10.1039/c3ra44659j

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2014/ra/c3ra44659j

 

■アルミニウムー空気二次電池の課題

 

アルミニウムは,開回路状態や放電における自己腐食性が高く,これまでは,アルミニウム合金や電解液組成の面からの解決が図られてきたが,アノードおよびカソードでのAl2O3 and Al(OH)3等の 副生成物のために,アルミニウムー空気二次電池の商品化には至っていなかった。

 

・著者らは,アルミニウム・アノードと空気カソードとを,セラミックアルミニウムイオン伝導体で覆い、アルミニウムイオン伝導性を維持しながら、電解液との直接接触による腐食を防ぐことを提案している。この手法によって,副生成物の蓄積や電解液の蒸発を防ぐこともできると思われるとしている。

 

前報においては,アルミニウムイオン伝導体としてAl2(WO4)3を用いていて,1週間安定な,アルミニウムー空気二次電池の作成に成功していたが,副生成物であるAl2O3 and Al(OH)3等の副生成物はまだ,アノード及びカソード側のアルミニウムイオン伝導体に生成されてしまっていた。

 

(↓前報との電解質溶液の違い)

本研究では,電解液としてplain salt waterを使うことで,約一か月間機能し,Al2O3 and Al(OH)3等の副生成物のないAl-airセルを作成した。(plain salt water →  10% NaCl水溶液,pH 6.7~6.8,前報では,従来用いられてきたNaOH水溶液。)

 

 ■Al-airセル構造

 

(↓前報とのAl-airセル構造の違い)

・airカソード側のアルミニウムイオン伝導体 lid(蓋)

 

前報:Al2(WO4)3  → AFLA-Aセル

本研究:Al2(WO4)3と導電性カーボンとの混合物 → AFLA-ACセル

 

  ■Al-airセルの充放電特性

 

・Fig.2で,AFLA-AセルとAFLA-ACセルとの充放電特性が比較されていて,

 

AFLA-Aセル: 0.2 μA/cm2 定電流下の充放電で,8.96 μA h/cm2

AFLA-ACセル: 0.1mA/cm2 定電流下の充放電で,3.12 mA h/cm2

 

(↑AFLA-Aセルの構造は,前報と同じで,電解質溶液が,NaOH水溶液からNaCl水溶液に変わっている。

 その違いで,容量は,約1/1000に低下している。)

(それに対して,AFLA-ACセルの場合には,電解質溶液がNaOH水溶液からNaCl水溶液に変わっても,容量の大きな低下は見られていない。)

 

・著者らは,AFLA-AセルとAFLA-ACセルとの違いを,

Al2(WO4)3 に混合した導電性カーボンによって電子移動が促進されるためであると説明している。

In other words, existence of conductive carbon as electron conductor in the lid,

electron migration was accelerated in the AFLA-AC cell.

We propose that this is the main reason for the enhanced capacity.

 

 AFLA-ACセルにおいては, 0.1mA/cm2 定電流下で,約1か月間の充放電サイクルが可能だった。

これは,これまでの報告での最長となる。

 

(Fig.4から判断すると,1日約20サイクルの充放電となっており,1サイクルの放電時間は,0.6時間前後と思われる。

それからおおよその1サイクル当たりの容量を概算すれば,0.06mAh/cm2となり,

かなり浅い充放電条件下でのサイクル特性と思われる。)

 

・Fig.5に,AFLA-ACセルの放電電位の,電流密度依存性のデータが示されており,

図からおおよその放電電圧を読み取ると,

0.05 mA/cm2:  約0.85 (V)

0.10 mA/cm2:  約0.0.77 (V)

0.20mA/cm2:  約0.63 (V)

0.50 mA/cm2:  約0.15 (V)

 

(↑やはり,放電電流密度が高くなることに伴って,過電圧が増加によって,顕著に放電電圧が低下している。

 これは,マグネシウム系の二次電池でも観察される現象で,

 金属電極表面で酸化被膜が成長してしまうことが影響していると思われる。

とにかく,この点も,多価金属における難しさの一つであると思う。)

 

 

以上は,2013年および2014年の時点での,非常に先駆的な研究の報告となっている。

 

 

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