アルミニウム二次電池【1】:グラフェンーアルミニウムイオンバッテリー No.1(β版)

レアメタルフリーの二次電池を目指しての情報検索。

 

 

ポスト・リチウムイオン電池として,現在もっとも勢いがあるように思えるのが,GMG(Graphene Manufacturing Group Ltd. )の

 Graphene  Aluminium-Ion Battery (以下,グラフェンーアルミニウムイオンバッテリー)かもしれない。

以前からWEbニュースでも紹介されていて,そのかなりの特性に半信半疑のところがあったが,関連情報検索を行ってみて,可能性を感じた。このブログ記事を始めとして,グラフェンーアルミニウムイオンバッテリーあるいはカーボンーアルミニウムイオンバッテリー(仮称)の個々の一次情報を見ていくことで,それらの可能性と課題に関して検証していきたい。

 

グラフェンに関しては,高価でありバッテリー等のマスのある産業応用は無理というコメントをWebニュースで見かけたりもするが,グラフェンと言っても,単層グラフェンから多層グラフェン,さらにはグラファイト粉末に近いものまで,様々なレベルや価格のものがある。グラフェンーアルミニウムイオンバッテリーが必要とされる特性を有するものであれば,その価格は致命的な問題にはならないと考えられる。

 

マグネシウムイオンバッテリー等の多価金属イオンバッテリーの容量評価においては,通常,活性炭等の正極材料を負極の金属に対して過剰として,金属の重さあるいは体積当たりでの容量やエネルギー密度を算出している。

これに対して,カーボンーアルミニウムイオンバッテリー(仮称)系では,負極として用いているアルミニウムを過剰として,カーボン正極のカーボンの重さあるいは体積当たりでの容量やエネルギー密度を算出しているようだ(例えば,M.-C. Lin, et al.,  An ultrafast rechargeable aluminium-ion battery, Nature, 520, 324–328 (2015),実験的に用いられている正極カーボン材料のマスは,数mg前後で評価されている)。そのため,最初は半信半疑のところがあったが,その後,海外では,各グループから同様な系の報告があり検証が続いている。

 

GMG社のグラフェンーアルミニウムイオンバッテリーのパワー密度は,~9350(W/Kg)とされている。

これは,酸化還元反応という化学反応に基づく二次電池としては信じられないような大きな値で,アルミニウム電解コンデンサーレベルのパワー密度となっている。しかも,エネルギー密度(Wh/kg)が290~310(Wh/kg)と高い。ほぼ,理想のエナジーストレージデバイスとみなせるような特性となっている。

 アルミニウムイオンスーパーキャパシタ的じゃないの?と思ってしまうパワー密度の高さだが,実際,ある論文では,バッテリーとキャパシタが融合した新しいエナジーストレージデバイス,というような記述があったりもする。

ともかく,グラフェンーアルミニウムイオンバッテリーは,グラフェン(カーボン)が主役となっているようにも思われ(エネルギー密度,パワー密度はカーボンの構造による。カーボンのマスで容量が決まる。),マイクロスーパーキャパシタの研究開発から多価金属二次電池の分野に流れてきた者としては,非常に興味深い。

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 前置きが長くなってしまったが,以下が,GMG社のWebサイトに掲載されているグラフェンーアルミニウムイオンバッテリーの特性となっている。

(技術内容の理解・議論に図表の表示が不可欠のため,GMG社のWeb記事にある図表のURLに直接リンクして表示させていただいております。著作権上問題がある場合にはご指摘ください。図表の表示を削除します。)

 

 

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GMG(Graphene Manufacturing Group Ltd. )ホームページ

https://graphenemg.com/

 

 GMGについて

 

 GMG は、TSXV (TSXV:GMG) に上場されているオーストラリアに本拠を置く革新的なクリーンテクノロジー企業で、グラファイトを採掘する代わりにメタン (天然ガス) を分解することでグラフェンと水素を生産しています。GMG は、同社独自のプロセスを使用することにより、高品質、低コスト、拡張性があり、「調整可能」で汚染物質のない/低汚染のグラフェンを生産することができ、多くの世界規模の地球に優しい/クリーンテクノロジーの用途においてコストと環境の改善を実証することができます。同社は、この低投入コストのグラフェン源を使用して、大規模なエネルギー効率およびエネルギー貯蔵市場をターゲットとした付加価値のある製品の開発を行っています。

同社は、次世代バッテリーの開発、オーストラリアの世界トップクラスの大学との協力、潤滑油の性能向上や性能強化型HVAC-Rコーティングシステムの検討など、GMGグラフェンのさらなる機会を追求しています。

 

 

October 11, 2022

GMG’S BATTERY UPDATE: SIGNIFICANT BATTERY PERFORMANCE, CELL AND GRAPHENE PRODUCTION IMPROVEMENTS

 GMG のバッテリーアップデート: バッテリー性能、セルおよびグラフェン生産の大幅な改善

https://graphenemg.com/gmgs-battery-update-significant-battery-performance-cell-and-graphene-production-improvements/

 

 グラフェンーアルミニウムイオンバッテリー(“G+AI Battery”)は,GMG とクイーンズランド大学(「UQ」)によって開発されており,GMG バッテリー グレードのグラフェン生産品質プログラムです。

 

•  GMG のグラフェン アルミニウム イオン バッテリーの計算エネルギー密度は 290 ~ 310 Wh/kg に増加し、2021 年 6 月 22 日の最後のバッテリー更新以来 93% 増加。

• 電力密度も約 9,350 W/kg に増加し、33% 増加しました。前回の更新からの増加。

• バッテリーセルの機能強化と再現性。

• バッテリーグレードの高品質グラフェンの大規模生産の再現性に対する信頼が高まる。

 

このリリースに記載されている性能データは、GMG の特定のコイン電池設計およびテスト データに基づいて計算されている

 

 https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2022/10/Screen-Shot-2022-10-11-at-5.24.14-AM-1024x443.png

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 Source: (1) Hongjie Dai, Nat. Commun., 2017, 8:14283, (2) Hongjie Dai, Nature, 2015, 520, 325, (3) and (4). University of Queensland validated GMG testing data.* (5). CATL 3.2V 150Ah LiFePO4 Battery Cell – LiFePO4 Battery (lifepo4-battery.com) on 29/09/22 (6). CATL 3.7V 65Ah NCM Lithium Battery Cell – LiFePO4 Battery (lifepo4-battery.com) on 29/09/22 7 *GMG testing data is based on industry standard estimate methodology – using a reducing factor of 2.3.

 *GMG テスト データは業界標準の推定方法に基づいており、低減係数 2.3 を使用しています。

 

https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2022/10/GMG2-1024x524.png

図

 

 https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2022/10/Screen-Shot-2022-10-11-at-5.31.19-AM.png

図

 Source: GMG Testing. All testing was carried out on coin cells with GMG Graphene in Aluminium-Ion Battery ambient temperature cycling from 2.7V to 0.5V, 4.5 Coulomb (2.2 A/g) charge rate

 出典: GMG テスト。すべてのテストは、アルミニウム イオン バッテリーの周囲温度を 2.7 V から 0.5 V までサイクルさせ、充電速度 4.5 クーロン (2.2 A/g) の GMG グラフェンを備えたコイン セルで実行されました

 

↑”4.5 Coulomb (2.2 A/g) charge rate”のところは,Coulomb ではなく,4.5C(Cレート,電流充放電測定の場合、電池の理論容量を1時間で完全充電(または放電)させる電流の大きさを1Cと定義,4.5Cであれば,1Cは4.5A)のことではないだろうか?

 

https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2022/10/GMG6-1.png

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 図 1: 典型的な G+AI バッテリーのコイン型セル設計

 

https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2022/10/GMG9.jpg

図

 図 2: G+AI コイン型セルのプロトタイプ

 

 https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2022/10/gmg10.jpg

図

 図 3: GMG パウチセルのプロトタイプ

 

 

リチウムイオン電池ははじめとする種々電池の重量エネルギー密度と体積エネルギー密度に関しては,

以下のURLの表1-1が参考となります。

 

リチウムイオン電池 の基本(日刊工業新聞社)

https://pubdata.nikkan.co.jp/uploads/book/pdf_file4fa08a3c3ccbf.pdf

表1-1電池の諸量、重量エネルギー密度と体積エネルギー密度の比較

 

↑上記のサイトのデータでは(それぞれの値は出展によって数~数十%変わることがあると思います),

 

リチウムイオン電池

重量エネルギー密度:201(Wh/Kg)

体積エネルギー密度:520(Wh/L)

 

上記のGMG社のデータによれば,

グラフェンーアルミニウムイオン二次電池

重量エネルギー密度:290~310(Wh/Kg)

 

 

プロトタイプのコインセルという条件ではあるが,

グラフェンーアルミニウムイオン二次電池の重量エネルギー密度は,

リチウムイオン電池の同等以上ということになる。

 

■以降のブログにおいては,上記の記事関連の一次情報(論文等)に直接あたることによって,

それらの可能性と課題を考えていくことにする予定です(2024.1.9)。

 

 

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