Energy harvesting 環境発電&蓄電: 以下は,Webで公開されている情報を頼りに,振動発電系のセットアップを行うための忘備録です。

種々電子素子の入手先,仕様,使い方,特性,実際の計測データ等々,私同様にゼロから振動発電系を組んでみたい方がいらっしゃった場合も考えて,

できるだけわかりやすく記録しておきたいため,出典のURLとともに図表等を直リンク(ダイレクトリンク)させていただくこともあるかもしれません。

直リンク等に問題がある場合には削除いたしますので,御指摘ください。よろしくお願い申し上げます。

 

 

振動発電&蓄電用実験系の準備 No.21 

[11]THRIVE K7520BP2 振動発電素子 (大) -両面・大電流タイプ-(14)

            LTC3588振動発電モジュールとの組み合わせ:

   紫色LED発光特性へのコンデンサ容量の影響

 前ページ(No.20)では,LTC3588振動発電モジュールの出力電圧Voutを3.6V設定として,種々の抵抗を負荷として接続して,オシロスコープで負荷抵抗にかかる電圧の時間変化を観測することで,電流ー負荷(抵抗)および電力ー負荷(抵抗)曲線の測定を行った。

負荷抵抗が大きいときには,LTC3588振動発電モジュールのスイッチングレギュレータは,振動発電電力の範囲内で,設定出力電圧Voutを定電圧として出力できたが,負荷抵抗が小さい場合には,振動発電によって得られる電力および電流の上限を超えてしまい,LTC3588振動発電モジュールからの出力電圧Voutは,パルス状の変動を示した。この場合,振動発電電力は時間平均的ではなく,パルス状に一度に出力されるため,そのピーク電力(電流)は,時間平均された電力(電流)よりも指数的に高くなった(負荷抵抗に対して)。

このようなパルス状の出力は,数ミリ秒の半値幅のものであったが,電力のピーク値は10mWを超え,環境発電系としてはかなり高い電力であった,

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↓それで,この特性を生かして,順方向電圧3.4V,20mAの紫色LED素子を明るく光らせることはできないだろうかと,

しかも,発光パルスの半値幅を長く(光っている時間を長く)できないものだろうかと,

考えて以下の検討を行った。

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紫色LED素子(OptoSupply社: OSV5YL5111A,405 nm, 順方向電圧3.4V,20mA)

赤色LED素子(OptoSupply社: OSR5PA3133A-1MA,625 nm, 順方向電圧:1.8V,1mA)

 

↑紫色LED素子を光らせるためには,かなりの電流を流さなければならず,振動発電で光らせるのは厳しい条件となる。

 

 先のNo.18では,LTC3588振動発電モジュールの出力側のVout-GND間に外部コンデンサーを追加して,赤色LEDの連続発光が可能ことを確認した。

しかし,紫色LED素子では,Vout-GND間にある程度容量の大きな外部コンデンサーを追加すると,振動発電の電力は時間平均的になってしまい,順方向電圧に昇圧できず,LEDの発光は観察されなかった。

 

振動発電の電力(電流あるいは電圧)では不十分なデバイス(ここでは紫色LED)を駆動したい場合,LTC3588振動発電モジュールでは,Vin-GND間に外部コンデンサを追加することで,間欠的に(LED発光ならパルス発光状に)ではあるが,そういったデバイスを駆動することが可能なようだ。

 

先のNo.17で引用させていただいたように,

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TC3588振動発電モジュール(ストロベリー・リナックス社)の

 LTC3588説明書 

https://strawberry-linux.com/pub/ltc3588-1.pdf

を見ると,

Vin-GND間に外部コンデンサを追加すると,振動発電電力をより長い時間蓄えることができる,とされている。

 

デフォルトのコンデンサー容量は10μFで,それが充電されVinが約4.8Vに上昇すると,後段のBuck型スイッチングレギュレーターが動作電圧を安定化しVoutに電力を供給する機構。

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”間欠的に”ということに関しては,Vin-GND間に外部コンデンサを追加して,出力側のコンデンサを充電する時間を稼ぐことになるので,例えば5Hzの振動数で振動発電を行って紫色LEDを光らそうとした場合でも,数秒以上の間隔でのパルス状発光となる。

駆動する時間を長くしようとすれば,Vin-GND間の外部コンデンサの容量を増やして,間欠的なデバイス駆動までの時間を待つことになる。

ともかく,振動発電では電力が不十分で駆動が困難なデバイスでも,間欠的になら,気長に待つことで駆動が可能となる。

これは,LTC3588振動発電モジュールを介さなければ実現できないことで,素晴らしい機能だと思う。

 

また,ここでの一連の実験では,かなり条件の良い振動発電による現象を見ているが,実際の環境発電条件は,比べ物にならないほど劣悪なものになると思われる。その時には,蓄電デバイスの自己放電などの現象が問題になってくるかもしれない。

その点からは,コンデンサ < スーパーキャパシタ < 二次電池 となるが,

酸化還元反応に元づく充放電機構の二次電池で,電圧,振動数,電圧パルス幅等,複雑に変動するパルス状の電力の充電ができるのか,ということが疑問になる。

実際に試してみないとわからない。環境発電に合わせた特性の蓄電デバイスの開発が必要になってくると思われる。

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図21-1には,   LTC3588振動発電モジュールのVin-GND側に接続したコンデンサ容量の紫色LED発光強度の時間変化に及ぼす影響をオシロスコープ波形で示した。

Vin-GND側に外部コンデンサの追加のない場合には,Ch1(オレンジ)で示される紫色LEDにかかる電圧は, LTC3588振動発電モジュールの設定電圧3.6Vに達せず,また,Ch2(水色)で示される紫色LEDの発光は,半値幅が約1msのパルス発光であった。

 

これに対して,Vin-GNDに並列に外部コンデンサを加えることで,振動発電電力をより長い時間蓄えられるようになり,Ch2(水色)で示される紫色LEDの発光は,トップハット形状のパルス発光となり,ピーク強度は平坦部を示すようになった。

また,トップハット型パルスの平坦部の発光時間は,外部コンデンサの容量が大きくなることで長くなった。

このようなトップハット型パルスの平坦部発光が起こっている間は, LTC3588振動発電モジュールの出力は,設定電圧通りの3.6V定電圧となっていた。

 

このように,Vin-GNDに並列に外部コンデンサを加えることで,高電流(高電力)型のデバイスにおいても,設定電圧通りの定電圧を保って,間欠的ではあるが,デバイス駆動を行うことができる。

しかし,それに伴ってパルス発光の周期は長時間化することになる。

対象とする駆動デバイスの特性を考えて,振動発電電力を,電力ピークの低下を伴う時間平均化するのか,時間圧縮してパルス状に高電力出力とするのか,を選択することになるように思う。

 

図21-2には, LTC3588振動発電モジュールの出力Vin-GND側に接続したコンデンサ容量によるLED発光ピーク平坦部時間およびパルス発光周期の変化を示した。

 コンデンサ容量に比例した,LED発光ピーク平坦部時間およびパルス発光周期の増加が示されている。

 

図21-3には, LTC3588振動発電モジュールの出力Vin-GND側に接続したコンデンサ容量によるLEDパルス発光強度(mW)の変化を示した。振動発電であるにも関わらず, LED発光強度は6mWを超えている(フォトダイオードセンサの2mmΦ光ファイバーヘッドで全光束をひろっているとは考えられないので,20 mW近くの放射強度があるように思う)。

ブリッジダイオードのみでの紫色LEDの場合には(No.13の図13-4参照),パルス発光のピーク強度は,12μW前後であったので, LTC3588振動発電モジュールを用いることで,実に500倍以上,発光強度が増幅されたことになる!

 

図21-1   LTC3588振動発電モジュールの出力Vin-GND側に接続したコンデンサ容量の紫色LED発光強度の時間変化に及ぼす影響。

Ch1(オレンジ):LEDに印可された電圧,Ch2(水色):LED発光強度(405nm,0.269mV/μW),

振動発電条件:振動数5Hz,圧電素子の両側に対称的に±7mm変位。

紫色LED素子(OptoSupply社: OSV5YL5111A,405 nm, 順方向電圧3.4V,20mA)

 

図21-2   LTC3588振動発電モジュールの出力Vin-GND側に接続したコンデンサ容量による

LED発光ピーク平坦部時間およびパルス発光周期の変化。

振動発電条件:振動数5Hz,圧電素子の両側に対称的に±7mm変位。

紫色LED素子(OptoSupply社: OSV5YL5111A,405 nm, 順方向電圧3.4V,20mA)

 

図21-3  LTC3588振動発電モジュールの出力Vin-GND側に接続したコンデンサ容量による

LED発光強度の変化。

振動発電条件:振動数5Hz,圧電素子の両側に対称的に±7mm変位。

紫色LED素子(OptoSupply社: OSV5YL5111A,405 nm, 順方向電圧3.4V,20mA)

 

コメント: 1
  • #1

    管理人 (水曜日, 24 4月 2024 09:59)

    コメント欄を試験的に開設しました。
    技術情報交換等にご利用下さい。(2024.4.24)