Energy harvesting 環境発電&蓄電: 以下は,Webで公開されている情報を頼りに,振動発電系のセットアップを行うための忘備録です。
種々電子素子の入手先,仕様,使い方,特性,実際の計測データ等々,私同様にゼロから振動発電系を組んでみたい方がいらっしゃった場合も考えて,
できるだけわかりやすく記録しておきたいため,出典のURLとともに図表等を直リンク(ダイレクトリンク)させていただくこともあるかもしれません。
直リンク等に問題がある場合には削除いたしますので,御指摘ください。よろしくお願い申し上げます。
振動発電&蓄電用実験系の準備 No.4
[7]圧電効果による振動発電: 開放電圧の観測
圧電板をプラスチックシャーレにテープで固定して(図4-2),手動Zステージに粘着性のポリウレタンゲル(耐震マット)で設置し(図4-1),その圧電効果による開放電圧をオシロスコープで観測した。圧電効果による開放電圧は,圧電板とステッピングモータ駆動のアーム先端との間のギャップに敏感であるので,ラボジャッキ等では調整が難しく,マイクロメータにより垂直方向の位置が微調整できる手動Zステージ(図4-3)を用いた。ステッピングモーターへのアームの取り付け(図4-4)は,パイジョンジョイント(三好キカイ)PG225(図4-5)を加工(ステッピングモーター軸径に合うような穴あけ加工,固定用のM6ねじ穴加工)したジョイントを用いた。先端をM6ねじ加工して小型雲台を取り付けた12Φmm径のアルミ丸棒を,ジョイントでステッピングモーター軸に取り付けた。市販のM6オネジ付きのSUS製ポールだと,ステッピングモーターによる振動数を上げていくとポールの重さで脱調が起こったため,より軽量のアルミ製のポールを作成して振動数の上限を向上させた。アームヘッドの小型自由雲台のネジに,樹脂製のカバー(図4-6)を被せたM6ナットを取り付けることで,圧電板の銀電極の損傷を防いだ。
マイクロメータ付きの手動Zステージ,は,国内販売品を購入すると結構な値段がしてしまう。
しかし,海外通販サイト,例えばAlibaba 系のAliexpressだと,1/5ぐらいの値段で購入することもできる。
例えば,現時点でWebにあるものだと,
Z軸モバイル光学変位微調整プラットフォーム高さ調節可能なリフト段スライドテーブル60 × 60ミリメート
同様なものがいくつか出品されているようだ。実際に使ってみて,国内品と品質的にさほど違いはないと思う。
海外通販サイト,確かに稀にトラブルが起きる時もあり(日本語では交渉はできない),また,商品の説明やアフターサービスもないが,自分の目で確認して選んで,自己責任で利用することができれば,1/5~1/10ぐらいの経費で,研究開発用途物品を揃えることができてしまう。取説もないし,いわゆる,玄人志向?と思って利用すれば納得ができる。
図4-1 ステージへの圧電板の設置
図4-2 プラスチックシャーレにセットした圧電板
図4-3 手動Zステージ
図4-4 ステッピングモータへのアームの取り付け
図4-5 ステッピングモータへのアーム取り付けに用いた
パイジョンパーツ
図4-6 ステッピングモータアーム先端に取り付けた
樹脂製の六角ネジカバー
まず,ブリッジダイオードなしで,圧電板を1 Hzの振動数で振動させた場合の,オシロスコープで観測した開放電圧(負荷のない状態での電圧)波形を図4-7および図4-8に示した。Zステージのマイクロメータで圧電板とアームヘッド間の距離を調整することで,正側の開放電圧を80Vになるようにしている。Zステージのマイクロメータで,開放電圧を連続的に微調整することが可能だった。
オシロスコープでの測定においては,10xプローブを用いて,信号振幅を10分の1に低減した。無負荷での圧電(ピエゾ)素子の開放電圧は,瞬間的に数十~数百Vとなる場合も考えらるので,測定装置の損傷には注意が必要となる。
開放電圧の波形が,アームで押したとき(プラス側)と引いたとき(マイナス側)とで非対称となっているが,これは,今回用いた圧電板の構造がunimorph(圧電セラミックス層が基板の片側にだけ形成された圧電素子)型であることが影響していると思われる(bimorph 型では,両側に圧電セラミックスが形成されている)。また,その非対称な信号の形状は,1Hzの場合と10Hzの場合とで異なっていた。
今回試作した振動発電実験用の駆動系では,数時間以上安定して80Vレベルの開放電圧を発生することが可能だった。Zステージのマイクロメータで圧電板とアームヘッド間の距離を狭めることで,100V以上の発電も行えたが,長時間の駆動では,ステッピングモーターの脱調によって開放電圧の低下が起こることがあった。100V以上の発電条件においては,プラスチックシャーレ上の圧電板を歪ませるための力が,今回用いたステッピングモータのトルクを超えたためであると思われる。
図4-7 1 Hzでの圧電板の開放電圧(負荷のない状態での電圧)波形
図4-8 10 Hzでの圧電板の開放電圧(負荷のない状態での電圧)波形
図4-9には,ブリッジダイオードを加えた振動発電系のセットアップを示した。ブリッジダイオードとしては,図4-10に示した新電元株式会社の2SBA60-7000を用いた(データシート)。
図4-9 ブリッジダイオードを加えた振動発電系のセットアップ
図4-10 ブリッジダイオードの例
ブリッジダイオードは、交流入力の負電圧側を反転して脈流を出力する。
新電元株式会社のサイトの解説が分かりやすい。
図4-11 1 Hzでの圧電板の開放電圧(負荷のない状態での電圧)のブリッジダイオードによる整流波形
上記は放電圧(負荷のない状態での電圧)であるので,種々の抵抗を負荷として入れた場合の電流ー電圧曲線および電力ー電圧曲線を測定して図4-12および図4-13に示した。廉価な丸形の圧電素子においても,数十μAの電流と0.4mW程度の電力を得られることが示された。この圧電素子でも,次の”[8]圧電効果による振動発電: 振動発電によるLED発光”に示すように,LEDをかなり明るく光らせることができる。
THRIVE (スライブ) K7520BP2KINEZ 振動発電素子(大)-両面・大電流タイプ-は,仕様では出力電流: 600μAとかなり高い電流値であるので,約10倍以上の発電電流および電力が想定される。
図4-14 開放電圧を80Vとしたときの負荷変化による電流ー電圧曲線および電力ー電圧曲線
図4-15 開放電圧を40Vとしたときの負荷変化による電流ー電圧曲線および電力ー電圧曲線
管理人 (水曜日, 24 4月 2024 10:10)
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