Energy harvesting 環境発電&蓄電: 以下は,Webで公開されている情報を頼りに,振動発電系のセットアップを行うための忘備録です。

種々電子素子の入手先,仕様,使い方,特性,実際の計測データ等々,私同様にゼロから振動発電系を組んでみたい方がいらっしゃった場合も考えて,

できるだけわかりやすく記録しておきたいため,出典のURLとともに図表等を直リンク(ダイレクトリンク)させていただくこともあるかもしれません。

直リンク等に問題がある場合には削除いたしますので,御指摘ください。よろしくお願い申し上げます。

 

 

振動発電&蓄電用実験系の準備 No.9

[11]THRIVE K7520BP2 振動発電素子 (大) -両面・大電流タイプ-(2)

            両側対称振動

 前ページ(1)では,株式会社THRIVE (スライブ)のKINEZ 振動発電素子(大)-両面・大電流タイプ(K7520BP2)について,一方向に片側押しした場合の振動発電特性を検討した。単発の振動の場合には,プラスあるいはマイナス側に大きく非対称形”だったが,繰り返し規則的な振動を加えていくと,非対称な交流が次第にプラスーマイナス対称形に近い振動に変化していく様子が観察された。

 

しかし,K7520BP2の本来の特性は,対称形に振動させた場合を見ないとわからないと思われることから,振動発電系の改良を行った。図9-1には,振動発電駆動部のステッピングモータ取り付けアーム先端の,圧電素子と接触す樹脂製の六角ネジカバーキャップの部分の加工形状を示した。樹脂製キャップにV字型のスリットを形成し,スリット奥の部分に圧電素子K7520BP2の短手方向の端を突き当てて設置し,ステッピングモーターのアームの上下動による圧電素子K7520BP2のたわみによる角度変化よりもV字型スリットの角度を大きくして,圧電素子K7520BP2の屈曲振動を妨げないようにした。図9-2および9-3には,圧電素子の両側に対称的に+7mmおよび-7mm変位させた 1Hz振動発電実験の様子を動画で示した。後段でオシロスコープデータとして示すが,圧電素子の両側に対称的に+7mmおよび-7mm変位させた場合に,Vp-p(振動発電交流波のpeak-to-peak開放電圧)はK7520BP2の仕様となっている最大出力電圧: 30Vp-pを超えることが確認できた。K7520BP2の屈曲,出力電圧,振動周波数をもっと上げることも可能だったが,とりあえず,仕様定格の30Vp-pまでで,以降の検証実験(振動発電モジュール LTC3588  への圧電素子K7520BP2の適用等)を行うこととした。

 


図9-1  振動発電駆動部のステッピングモータ取り付けアーム先端キャップの加工

 

図9-2  1Hz振動発電実験:  THRIVE K7520BP2 振動発電素子・大電流タイプ

圧電素子の両側に対称的に変位:+7mm,-7mm

図9-3  1Hz振動発電実験:  THRIVE K7520BP2 振動発電素子・大電流タイプ

圧電素子の両側に対称的に変位:+7mm,-7mm


図9-4  10Hz振動発電実験:  THRIVE K7520BP2 振動発電素子・大電流タイプ

圧電素子の両側に対称的に変位:+7mm,-7mm

 

上記の実験でも,MACH3を使ってステッピングモーターの制御を行っているが,その際に用いた,MACH3の繰り返しルーティン用のGコードを以下に示した(No.3参照)。

今回の実験に用いているステッピングモータ及びアーム長(100mm)では,ステッピングモータの回転速度を(実験的に)F26.7とした場合に,振動数1Hzでの振動発電条件となった。より高振動数の場合には,Fの値に振動数を掛けた値とすればよい。ステッピングモータのアームは,圧電素子の両側に対称的に+#1および-#1変位することになる(#1はステッピングモーターの駆動角)。以下の#1の値は,+7mmおよび-7mmの変位に対応したものとしている。#1の値は,ステッピングモーター軸とアーム圧電素子接触部分までの長さから計算した。

----------------------------------------------------------------------------

%

(---------parameter setting-----------)

(G-code program for MACH3 using A-axis)

G90(absolute coordinate)

G21(mm unit)

#1=0.11153(A-axis 10mm=360deg,0.1mm=3.6deg rotating depending on stepping motor)

#2=600(Repeat routine cycle No)

F26.7(mm/min=12x36度/min)

G01 A0(return to zero position of A-axis)

G91(relative coordinate)

(---------repeat routine-----------)

M98 P1 L#2(repeat routine, goto O1)

M98 P2(End routine, goto O2)

O1

G01 A#1(forward rotation by #1)

G01 A[0-#1*2](backward rotation by #1x2)

G01 A#1(forward rotation by #1)

M99

(---------end routine-----------)

O2

G90(Absolute coordinate)

G01 A0(Return to zero position of A-axis)

M30(End and rewind)

%

----------------------------------------------------------------------------

 

上記の振動発電系において,圧電素子の両側への対称的な変位量を±1mmから±7mmまで変化させた場合の,オシロスコープで観測した振動発電の電圧変化を以下に示した。図9-5~図9-11での振動数は1Hzとしている。何れでも,きれいな三角波状の振動発電電圧が観測された。変位量が±7mmの場合のVp-pは,31.4(V)となり,定格の30Vを超えている。Vp-pに関しては,まだまだ高くする余裕がありそうだが,素子寿命との関係もあるだろうし,まずは定格内での検証実験を行うこととする。変位量が±7mmの場合に,電圧信号がプラスーマイナス側でわずかに非対称となっているのは,振動発電実験での,圧電素子屈曲動作の対称性がわずかに外れていることによると考えられる。

 

図9-5 変位量が±1mmの場合のK7520BP2の1 Hz振動発電特性

 

図9-6 変位量が±2mmの場合のK7520BP2の1 Hz振動発電特性

 


図9-7 変位量が±3mmの場合のK7520BP2の1 Hz振動発電特性

 

図9-8 変位量が±4mmの場合のK7520BP2の1 Hz振動発電特性

 


図9-9 変位量が±5mmの場合のK7520BP2の1 Hz振動発電特性

 

図9-10 変位量が±6mmの場合のK7520BP2の1 Hz振動発電特性

 


図9-11 変位量が±7mmの場合のK7520BP2の1 Hzでの振動発電特性

 

図9-12 変位量が±7mmの場合のK7520BP2の1Hzでの振動発電特性,ブリッジダイオード整流

 

圧電素子の両側への対称的な変位量を±7mmとし,振動数を5 Hzおよび10 Hzしたときの,ブリッジダイオード整流後の振動発電特性を図9-13および図9-14にそれぞれ示した。振動数の増加とともに,振動発電電圧が減少しているようにも見えるが,その他の原因として,振動発電の駆動に用いたステッピングモータの変位量が振動数の増加とともに減少している可能性もある。

 

上記の圧電素子の使用説明書では,

DATA_KINEZ(TM) 振動発電素子 (sengoku.co.jp)

https://www.sengoku.co.jp/item/pdf/spec_KINEZ_1_20.pdf

 

6ページおよび7ページに振動発電素子の振動電気特性のデータが示されているが,20 Hz付近から60 Hz付近までの振動数の増加に対して,Powerが減少している。図9-12~9-14のデータは,そのような特性に対応したものと考えてよいのだろうか?

振動発電特性の試験法が異なれば結果もことなる場合もあり,個々の系において試行錯誤して特性を把握する必要があると思われる。

 

図9-15および図9-16には,電素子の両側への対称的な変位量を±7mmとし振動数を10 Hzしたときの,振動発電特性の観測を,オシロスコープの時間軸をより短くして(1s/div →100ms/div)観測した場合のデータを示した。それを見ると,1Hzではきれいな三角波状の振動発電電圧が,10 Hzではサイン波状のものになっている。このデータからは,振動数の増加に伴う圧電素子自体の振動発電特性の変化が示唆されるように思われるが,どうだろうか?

 

次のNo.10では,振動発電モジュール LTC3588  へ圧電素子K7520BP2を適用した場合の特性やLED発光等について検討する予定としている。

 


図9-13 変位量が±7mmの場合のK7520BP2の

5 Hzでの振動発電特性,ブリッジダイオード整流

 

図9-15 変位量が±7mmの場合のK7520BP2の

10 Hzでの振動発電特性

 

図9-14 変位量が±7mmの場合のK7520BP2の

10 Hzでの振動発電特性,ブリッジダイオード整流

 

図9-16 変位量が±7mmの場合のK7520BP2の

10 Hzでの振動発電特性,ブリッジダイオード整流

 

 



コメント: 1
  • #1

    管理人 (水曜日, 24 4月 2024 10:12)

    コメント欄を試験的に開設しました。
    技術情報交換等にご利用下さい。(2024.4.24)