レーザー直接描画

これまでに,研究開発用途に種々のレーザープロセッシング装置を自作してきました。以下は,限られた予算の中での取り組みの雑記です。確かに,最先端の短パルスレーザーには多大な経費が掛かりますし,限られた組織でしか使用できません。しかし,材料やデバイスを目的としたレーザープロセッシングという視点から考えれば,市販の廉価な3Dプリンタ関連の部材で組んで,研究開発に役立てるということも可能なように思っています。ただ,我が国ではそういったコンポーネント(製品の中間部材)を得ることは難しく,海外のネット通販を利用することが多くなります。また最近では,ネットのハイアマチュアの方々からの情報は,ある部分では大きな組織の研究機関を凌駕している場合もあります。

ステージスキャンによる手法

ステージスキャンによるレーザー光のスキャン法は,描画速度の点ではガルバノスキャナーによる手法に比べて劣るものの,高倍率の対物レンズによって高い空間分解能が得られる点や,装置コストが抑えられることなどの利点を有しています。レーザー光源に関しても,レーザーカーボン化等の用途であれば,低価格なCWブルーレーザーダイオードを使うことも可能で,実際,3Dプリンターと同様なステージスキャン系を使ったレーザー描画装置が10万円前後で販売されています。ただ,マイクロメーターレベルの描画分解能が必要な場合には,3Dプリンターで使われているベルト駆動のステージ(大面積を比較的高速にスキャンする用途には適する)では不十分な場合があります。数ミクロン以上の分解能が必要な場合には,精密研削ネジを使用したステッピングモーター駆動の自動ステージ等は必要になります。しかし,価格的には,移動量が20mm前後のものでも,1軸だけでも,10万円前後の経費は必要となり,3軸揃えて,しかも純正のステージコントローラで駆動するとなると,かなりの経費になってきます。そんなことから,利用することがあるのが,動作確認済みの中古品を扱う企業さんのWebサイト(例えば,ORIGINAL MINDさん)です(運が良ければ)。ORIGINAL MINDさんでは,コストパフォーマンスの良いオリジナルの種々のステージスキャナや単軸ステージも販売されていて,スキャン分解能よりも移動ストロークの長さ(150mm)が必要だった用途で使用した経験がありますが,なかなか優れたものでした。そしてまず,その企業理念に共感します。

 

理化学機器メーカーの自動ステージの駆動部は,実験室用途の装置系の場合には,ステッピングモーターであることが多いです。ステッピングモーターには2相タイプと5相タイプがありORIENTAL MOTOR ),我が国では精密機器用には5相タイプが主流だと思いますが,他国では2相タイプであることが多いです。2相タイプと5相タイプとでは,確かに始動・停止・動作時のモーターの振動という面では,5相タイプが優れています。しかし,3Dプリンタの普及で入手しやくなった,かなり低価格な自動ステージ,それを駆動するドライバ,コントローラー,ソフトウェアは,ほぼ2相タイプの仕様になっています。そのため,理化学機器メーカー製の5相モータ系の自動ステージを,自作の(といいますか,3DプリンタやCNCの普及で入手がしやすい部材からなる)コントローラー系で制御しようとしますと,苦労することがあるかもしれません。理化学機器メーカー製のステージコントーローラーは,ほとんどが各社独自規格のコマンド体系になっており,CNC(Computerized Numerical Control)の共通言語であるGコードが使えず,3Dプリンタ系の3Dデータとリンクさせたステージ制御ができず,孤高な仕様になっていて使いずらい面があります。クローズドループ制御で精度的には非常に高いですが,オープンループ制御でも十分で,過剰性能に感じることもありました。そんな時に便利なのが,ORIGINAL MINDさんのオリジナル製品のSERVO LINKERでした。購入すると詳細な技術資料が提供されて,これと,例えばオリエンタルモータさんのドライバを組み合わせることで,5相モーターの制御が低予算で可能です。ただ,パソコンとの接続がパラレルポート(Dsub 25P )になっています。国外のWebショップには(最近は国内Amazonでも,割高ですが),同様な機能のもので,USB接続のもの(Windows11,10 64bitでもMach3が動作,Gコード行数が50以下なら無料で使い続けられます)が驚くような価格で販売されています。しかし,かなりの玄人仕様?で説明不足の点があり,ORIGINALMAINDさんのユーザーサポートに比べると,非常な違いがあります。

【動画1】ステージスキャンによるレーザー描画.

【動画2】ステージスキャンによるレーザー描画.

【動画3】リニアステージを用いた高速高分解能レーザー直接描画.

【動画4】ステージスキャンによるレーザー描画,A4サイス.


ガルバノスキャンによる手法

 国内の理化学機器メーカーから,ガルバノスキャナー関連部材を購入して,ガルバノスキャナー系のレーザープロセッシング装置を自作しようとすると,その難易度はかなり高いように思います。国内のメーカーはガルバノスキャナーは産業用途というイメージを持っているようでエンドユーザーといいますか,スモールユニットの研究開発の現場で,ガルバノスキャナー関連部材が個別に購入され自作用途で使用されることは想定していないようです(展示会などでお話を伺うと)。そのため,レーザースキャン用のガルバノスキャナー系といいますと,ソフトウェア含めてシステム屋さんに依頼するようなことが多くなると思いますが,当然高価です。

 

しかし,海外製品に目を向けますと,エンドユーザーが自作するたの部材が豊富に出回っていて,20万円前後の経費で,ガルバノスキャナーヘッド,F-θレンズ,ビームエクスパンダー,ドライバ,コンロトーラー,ソフトウェアが揃います。このHPのショップのページ(準備中)で,追々ご紹介したく思っています。

 

【動画5】ガルバノスキャンによるレーザー直接描画.

【動画6】ガルバノスキャンによるレーザー直接描画.