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非液体電解質,高分子ゲル電解質,IRドロップ,フレキシブル
(β版)
2023.8.23
スーパーキャパシタ(電気二重層キャパシタ)の放電電圧の制御を目的として,マグネシウム電極を備えた非対称構造のスーパーキャパシタの特性を検討していて,それがマグネシウム二次電池だろうと気づいた訳ですが,そのような検討を始めてから約2か月ということもあって,マグネシウム二次電池の分野の全体像が掴めていません。そのようなレベルであれこれ言うことは学術的にはあり得ないことだとは思うのですが,もともと異分野の人間だし,もう学会の中で生きていく必要もないので,SNSでオープンスタイルで行きたく思っています。ご容赦下さい。
”マグネシウム二次電池”というキーワードでググると,様々なマグネシウム二次電池が出てきて,まず,戸惑いました。今のところの自分の理解としましては,大きくは,「マグネシウム二次電池」的なものと,「マグネシウムイオン電池」的なものに分類されるのでは?という解釈でいます(まだ正確なことを言える知識レベルをこの分野に関しては持ち合わせていないので,誤解があればいつでも訂正いたします)。
マグネシウム系の電池の分類に関しましては,日本マグネシウム協会さんのサイトがわかりやすく解説されています。
http://magnesium.or.jp/magnesium_battery/mgbattery3/
そのサイトの最初の図に,”現在実用化もしくは開発中のマグネシウム電池”の分類図が示されています。
マグネシウム電池は,一次電池,二次電池,および燃料電池の3つに大きく分類されています。一次電池は,Mg/MnO2乾電池と注水電池に分類され,注水電池は,Mg/銀塩化銀電池,Mg/MnO2電池,およびMg/空気電池に分類されています。
燃料電池は,Mgを水素発生源とするものと,MgH2を水素発生源にするものに分類されています。それで,二次電池に関してですが,その先の分類の分岐は示されていません。
「マグネシウム二次電池」の項では,”マグネシウム二次電池とは,マグネシウムイオンを移動させることにより充放電を可能にする電池です。”と定義されておられました。
また,”マグネシウム二次電池は開発中の電池でまだ実用化はされていませんが、マグネシウムにはリチウムイオンなどと比べて、以下に示すような利点があります。”..........”マグネシウム二次電池の開発の現状ですが、現在、下表に示す材料を用いた研究・開発が進められています。全ての組み合わせを網羅した研究はありませんが、いくつかの組み合わせで二次電池としての可能性が見いだされてきています。”
ということでした。
上記の,「マグネシウムイオンを移動させることにより充放電を可能にする電池」の部分で,マグネシウムをリチウムに置き換えれば,これは,リチウムイオン電池( lithium-ion battery,LIB)になりますので,そのようなマグネシウム系の二次電池は,マグネシウムイオン電池( magnesium-ion battery,MIB)になるのでしょうか?
やはりググりますと,Magnesium ion batteries (MIBs) 関連の報告が多数出てきます。
マグネシウムイオン電池( magnesium-ion battery,MIB) 以外のマグネシウム二次電池はあるのでしょうか?
”マグネシウム二次電池”を和英キーワードでググりますと,溶液系電解質の電池に関しましてはたくさん出てきます。
例えば,オープンアクセスの論文で示しますと,
■High power rechargeable magnesium/iodine battery chemistry
H. Tian et al, Nature Communications, 8, 14083 (2017)
https://www.nature.com/articles/ncomms14083
マグネシウム/ヨウ素二次電池,と和訳すればよいでしょうか。
このタイプの二次電池は,亜鉛を金属電極とした場合ものは,以前から良く知られていて,
例えば,
山本隆一,村上泰治,氏家久美子,化学と教育 45 (11), 640-641 (1997)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/45/11/45_KJ00003519866/_pdf/-char/ja
この種の二次電池は,これまでに様々な金属に関して研究開発が行われてきているようです。
例えば,
■Metal-Iodine and Metal-Bromine Batteries: A Review
P. Li et al., Bull. Chem. Jpn, 94(8) , 2036-2042 (2021)
https://www.journal.csj.jp/doi/full/10.1246/bcsj.20210182
Abstract: Rechargeable metal-iodine and metal-bromine batteries have been pursued as potentially effective, low-cost, and mass-producible alternatives to current transition-metal-based batteries due to highly reversible redox and abundant resource.
上記のようなメタルーハロゲン二次電池では,ハロゲン種としては,塩素,臭素,およびヨウ素が考えらると思います。電池の放電電圧の平坦部の電圧は,メタルが同じ場合,Cl > Br > I の傾向があるようですが,これは,各ハロゲン分子とハロゲンイオンとの間の酸化還元電位が,Cl(1.36V),Br(1.07V),および I (0.536V)であることでも説明できると思います。しかし,副反応によって,塩素イオンの還元による塩素ガスや臭素イオンの還元による臭素ガスが発生した場合には,電池の劣化やそれらの毒性が問題になってくると考えられます。その観点からは,ウェアラブル電子機器系のエナジーストレージデバイスを想定した場合には,メタルーハロゲン二次電池においては,ヨウ素系を用いることが好ましいと思います。
メタルーハロゲン二次電池において,ハロゲン種がヨウ素としてメタル種を変えた場合の二次電池の放電電圧の平坦部の電圧は,P. Li らの総説のFigure 1では,Li-I2 ≈ K-I2 > Na-I2 > Mg-I2 > Zn-I2 の順番になっています。この放電電圧の順番も,それぞれの金属の酸化還元電位,Li(-3.04V),K(-2.93V),Na (-2.71V),Mg (-2.36V), およびZn (-0.763V)によっても説明できます。ここで金属の安定性を考えると,Li,K,およびNaは,わずかな水を含むことで容易に発火が起こってしまいますので,電解質溶液は可燃性の有機溶媒(十分に脱水された)を用いることが必要になります。
もし,上記の種々メタルーハロゲン二次電池のなかで,ウェアラブル用途のフレキシブルで薄型の二次電池,折り曲げても安全で安定に動作する二次電池,そして,間違って一般ごみとして処分された場合にも発火の危険のない二次電池として好ましいものを考えた場合には,Mg-I2二次電池がその可能性を有したものになると思います。
ところで,上記のメタルーハロゲン二次電池は,液体電解質を使っており,また,電解質にヨウ素分子 I2 を加えたものとなっています。私たちの検討しているマグネシウム二次電池は非液体電解質のもので,条件は異なるのですが,ヨウ素分子 I2 は加えておらず,逆に,正極でのヨウ素分子 I2 の発生が,二次電池の放電電圧,IRドロップ(IR損),およびサイクル特性に負の因子として作用し,ヨウ素分子 I2 の発生を抑えることのできる積層型電解質を用いた電池構造によって特性を改善することができました。また、積層型非液体電解質によって、液体電解質で問題となる電極での樹脂状のヨウ化マグネシウムの発生をなくすことができました(特願2023-132259)。
液体電解質,非液体電解質の違いはありますが,ヨウ素分子 I2 の酸化還元反応挙動が電池特性に及ぼす影響や,電池構造による違いの検討が,マグネシウム二次電池の特性向上につながっていくと思われます。
上記のタイプの電池を,マグネシウム二次電池と呼ぶか,あるいは,マグネシウム/ヨウ素二次電池と呼ぶかはいろいろと考え方があるとは思います。マグネシウム二次電池という大きな分類があって,その中に,マグネシウムイオン電池およびマグネシウム/ヨウ素二次電池がある,という考え方が妥当かもしれません。
(この分野では,すでにそれが常識であるのなら,新参者の駄文,誠に申し訳ありません。)
マグネシウムイオン電池は,リチウムイオン電池に比べて,資源が豊富で産地の偏りがない,発火の危険性が少ない,体積当たりの電気容量(理論値)がリチウムに比べて高いなどの利点を有しています。
マグネシウムイオン二次電池の実現のために,電池を構成する正極、負極、および電解液の研究開発が進められています。
例えば,電解質の研究開発に関しては,以下のようなレビューが報告されています。
八 木 俊 介,日本金属学会誌,85(10),367-374 (2021)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinstmet/85/10/85_J2021028/_pdf/-char/ja
その論文のかなでは,”正極活物質の評価および研究開発を行うために,電解液の研究開発も同時に進める必要があった.これは,要素材料ごとに研究を実施できる,比較的成熟したリチウムイオン電池の研究とは大きく異なる点である.現在でも満足できる安定性を有するマグネシウム蓄電池用電解液は開発されていないが,以前よりも電位窓の拡大が達成されており,3 V vs. Mg/Mg2+程度の酸化還元電位を有する正極活物質の評価も,かろうじて行うことができるようになってきた。” と述べられておられます。マグネシウムイオンの移動のための電解質の構造は,グリニャール試薬に類似したもので(Fig.7),それらを溶解する溶媒は,エーテル系の有機溶媒等が用いられるようです。
電解液のための電解質(塩)の安定性やプロセスでの扱いやすさ考えた場合,リチウムイオン電池とマグネシウムイオン電池とでの比較では,現状では,従来のリチウムイオン電池のほうに利点があるように思われます。
しかし,リチウムイオン電池のAlternativeは, マグネシウムイオン電池である必要があると思われ,今後の研究開発の進展が期待されます。上記レビューでも述べられておられましたように,固体電解質系の検討も,ブレークスルーにつながる可能性を有しているように思われす(素人が偉そうに申し訳ありません。Twitterの書き込みレベルのこととして,ご容赦ください。)
リチウムイオン電池のAlternativeとしては,やはりマグネシウムイオン電池が本命であることは間違いないと思います。マグネシウムはリチウムに比べて,資源が豊富で産地の偏りがないことから,その研究開発は国策的にも重要なものだと思います。
これに対して,マグネシウム/ヨウ素二次電池は,構成要素の安定性・安全性や,それによる製造プロセスコストの大幅な低減が期待されます。リチウムイオン電池のAlternativeとしてではなく,別の価値観に基づいて,例えば,薄型・フレキシブルで安全な二次電池,というような用途・応用分野を考えていけば,実用化は意外に近いようにも思います。そのためには,液体電解質系ではなく,非液体電解質系であること,全固体型マグネシウム二次電池であることが,重要なファクターになると考えています。
また,その電池容量に関しましても,限界値はまだ明確ではなく,それも今後の研究開発でさらに向上していくことが期待されます。マグネシウムイオン電池系で研究開発されているような,新規な正極材料・負極材料の検討ということも,キーポイントであるように思われます。
(2023.8.23 時点での素人のたわごと。今後,随時修正を加えて行きます。)
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