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 全固体型マグネシウム二次電池に向けて No.4 

マグネシウム一次電池特性および二次電池特性

<単層型非液体電解質マグネシウム電池の場合>

2023.8.26

 

単層型非液体電解質からなるマグネシウム/ヨウ素電池の充放電特性:

一次電池特性および二次電池特性

 

マグネシウム一次電池は,マグネシウム海水電池やマグネシウム空気電池等,防災用・非常用電池として,すでに実用化されています。これに対して,マグネシウム二次電池は,充蓄電可能な次世代二次電池としての研究開発が,多くのグループによって現在進められています。

 

私たちは,マグネシウム二次電池の一つの可能性として,積層型非液体電解質二次電池(特願2023-132259)の研究開発を進めております。それは,液体電解質を使わない全固体型マグネシウム二次電池 と見なせるものであることから,その安全性を生かした薄型フレキシブルなマグネシウム二次電池をできるだけ早い時点で形にして,端緒を開きたいと考えております。

 

ところで,その電池特性は,二次電池ではなく,従来の一次電池的なものではないのか,という疑問も生じると思います。そこで,研究開発の最初期に検討を行っていた単層型非液体電解質からなるマグネシウム電池(構造B)を例にして,その一次電池特性,二次電池特性について示したいと思います。Fig.1にその構造を示しましたが,10が負極となる金属電極(マグネシウム),11が正極,および20がヨウ化カリウム等を含む高分子膜という非常にシンプルな構造のものです。その充放電特性をFig.2に示しました。定電流下で,充電10分,放電20分の条件で測定を行った結果です。充電を行い,放電モードに切り替わると,初期に大きなIRドロップ(IR損)が生じ,その後,約10分ほど,1.5V前後の平坦部を有した放電挙動が見られます。このような充放電挙動は,マグネシウム二次電池的な特性によると考えられます。Fig.2で,20分以降の放電においては,電圧が階段状に低下し,その後は一定電圧での放電挙動となっていますが,この部分は,マグネシウム一次電池的な特性によると考えられます。それを確かめるために, 電池組み立て後に, 充電をまったく行わずに定電流放電した場合の起電力をFig.3に示しました。約1.2Vの起電力の一次電池としての特性が示され,これは,Fig.2の20分以降の放電特性に一致したものとなっています。

Fig.1 単層型非液体電解質からなる電池(構造B)の

断面の模式図.

Fig.2 単層型電解質からなる電池(構造B)の充放電曲線.

Fig.3 単層型電解質からなる電池(構造B)の一次電池特性.    充電を行わずに定電流放電した場合の起電力.


 

単層型電解質からなる電池(構造B)の充放電のサイクル特性を,Fig.4に示しました。上記で述べた,マグネシウム/ヨウ素電池の,二次電池としての充放電特性と一次電池としての放電特性のサイクルが,安定して観測されています。


Fig.4 単層型電解質からなる電池(構造B)の充放電のサイクル特性.

上記のような,単層型非液体電解質マグネシウム電池(構造B)は,非常にシンプルな構造で,その構成部材も,安価で,空気中の高湿度下でも劣化のほとんどないものであるため,製造コスト面でも有利なものとなってはいるのですが,やはり,充放から放電に切り替わる際のIRドロップ(IR損)が,実用上,非常に問題となってくると考えられます。

 

そこで私たちは,まず初めに,この問題の解決にチャレンジし,その解決策としての可能性の一つが,積層型非液体電解質二次電池(特願2023-132259)となっています。その電池形態は,液体電解質を使わない全固体型マグネシウム二次電池 と見なせるものです。

当然,積層型非液体電解質二次電池での,上記のFig.2および3に対応した特性,詳細条件や,その他の基本特性も示すべきところではありますが,現時点でまだその最適値・限界値を見極められていません。今年中に,トライアルサンプルとして,実際に,固体型マグネシウム二次電池(薄型フレキシブルフィルム状)を提供することを目的としており,それと並行して電池特性の最適化を行っていく予定です。