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 全固体型 多価金属二次電池に向けて No.7

電極表面形状効果による電極の電気化学的活性化 (3)

電気化学電池用電極及びそれを用いた電池(特願2023-182334)関連

 

2023.10.27

 

微細な凹部の空隙を

多孔質炭素材料で充填した

ハイブリッド電極

 

 前項のマグネシウム金属電極の充放電曲線においては,凹部の有無にかかわらず,充電から放電に切り替え直後にスパイク状の電圧低下(IRドロップ)が起きている.この原因としては,不動態皮膜等の電気化学的に活性の低い層の形成の影響が考えられる。

 

そこで,凹部を多孔質炭素材料で充填することで電気化学的な活性の高いマグネシウム電極表面を被覆して,マグネシウム金属の電気化学反応が多孔質炭素層の空隙を介して起こるようなマグネシウム金属と多孔質炭素材料とがハイブリッド化した電極構造の検討を行った。その構造を,模式的にFig.1に示した.

Fig.1 マグネシウム金属電極表面の凹部の空隙を多孔質炭素材料で充填した電極を模式的に示した

(a)平面図および(b)断面図.


充放電特性における

電極凹部への多孔質炭素充填の効果

Fig.2に,(a) マグネシウム金属電極表面の凹部に多孔質炭素層のない電極,及び(b) マグネシウム金属電極表面の凹部を多孔質炭素材料(カーボン導電塗料)で充填した電極の充放電曲線を示した。

 

 マグネシウム金属電極表面の凹部に多孔質炭素層のない電極の充放電曲線(Fig.2a)おいては,充電から放電に切り替わった直後の鋭いスパイク状の電圧低下が起こった。このような放電直後に電圧が降下する現象は、電気化学反応の過電圧の増加によるIRドロップ(IR損)に関係したものでる。その一因としては、不動態皮膜等の電気化学的に不活性な層の形成の影響が考えられる。

 

これに対して,マグネシウム金属と多孔質炭素材料とがハイブリッド化した電極構造の場合には,充電から放電に切り替わった直後の鋭いスパイク状の電圧低下が完全に消失している(Fig2a)。また,多孔質炭素層によって,凹部の電気化学的な活性が保たれることにより,充電時と放電時とでの電圧差を大幅に低減することができた.

 

Fig.2 マグネシウム二次電池の充放電特性.

(a) 凹部に多孔質炭素層の無いマグネシウム金属電極,

(b) 凹部に多孔質炭素層を充填したマグネシウム金属電極,

電極面積:1 cm2,電流密度: 100 μA/ cm2

 


上記の(1),(2)および(3)で述べた手法は,平坦であった2次元平面状の電極表面に、3次元的な構造を形成し、その電極表面形状効果によって引き起こされる、局所的な,電気化学反応に係わる化学種の拡散性や局所濃度の違いを利用するものとなっている。それによって生じる局所的な電位差(局部電池)が,電気化学反応を促進すると考えられる。これは,電極の表面形状が電気化学的なエネルギーの発生に寄与しているとも見なすことができ,3D電極アーキテクチャが生み出し得る効果の一つになると考えられる。

 

このような効果は,化学成分や化学組成、結晶構造やその配向に依存しないことから、マグネシウム二次電池,マグネシウム一次電池等のマグネシウム系の金属電極に限定されず、他の金属電極、金属合金電極、金属酸化物電極、セラミックス電極等の電気化学電池用電極全般に適用すること可能であると考えられる。

例えば,充放電において,過電圧の減少で電流密度が上げられれば,2次電池系がキャパシター系に対して劣っていたパワー密度(短時間に高パワーを入出力できる特性)の面での改善も期待されるように思う。