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全固体型 多価金属二次電池に向けて No.9

マグネシウムイオン二次電池における正極の問題

積層型非液体電解質二次電池(マグネシウムヨウ素イオン二次電池)

による課題解決へのアプローチ

2023.11.6

 

マグネシウム二次電池に関して,異分野の者が検討を始めて約4か月となりましたが,少しずつ,マグネシウム二次電池の問題点や業界の常識を知るようになってきました。これにはある機会に、SAITECのK氏に御教示いただいたことが大きかったです。感謝致します。

 

そこで,私たちが検討を行っているマグネシウム二次電池(今後、”マグネシウムヨウ素イオン二次電池” と呼称)の構造と特徴に関して再検証したく思います。

 

以下は,マグネシウムイオン二次電池における正極の問題と解決に向けたアプローチです。

マグネシウム二次電池における正極の問題

 

マグネシウムイオン二次電池においては,Mg2+イオンを挿入・脱離できる優れた正極材料の開発が課題となっています。これは,リチウムイオン電池の場合には,グラファイトをはじめとする種々のカーボン材料の層間へのリチウムイオンLiのインタカレーションが安定に起こるのに対して,マグネシウムイオン二次電池の場合には,Mg2+イオンのカーボン材料の層間へのインターカレーションが起こりづらいという問題があるためです。

 

このため,論文等でマグネシウム二次電池の特性示す場合には,三極セル構造における,マグネシウム負極と参照極(Ag/Ag,Mg/Mg2+等)との間での電位差という形で,フラットバンド電位の安定性等を議論している場合が多いようです。

 

このとき,正極にカーボン材料を用いた場合には,正極ではMg2+イオンのカーボン材料層間へのインターカレーションではなく,電気二重層キャパシタ的な物理吸着機構が優勢となります。そのため,正極-負極間電位という形で表すと,その充放電曲線は,キャパシターと同様な三角波状の電位変化を示すことになります。

 

負極にマグネシウム,正極にカーボン材料を用いた場合の充放電曲線は,形状的にはリチウムイオンキャパシタと同様となりますが,マグネシウム負極の場合には,充放電時に電流密度を上げると過電圧が大きくなるという問題があり,それでは,電気二重層キャパシターの利点(パワー密度が高い)を生かすことができないことになります。

 

マグネシウムイオン二次電池の場合,上記の問題の解決は,いかに優れた正極材料を,新規開発するかということに集約されています。

 

 

マグネシウムヨウ素イオン二次電池: マグネシウム二次電池の正極の課題に対するアプローチ

 

私たちが検討を行っているマグネシウム二次電池の構造の一形態を,模式的にFig.1a(構造A)に示しました。積層型の構造Aでは,10:マグネシウム負極,11:カーボン材料正極,20: 第一非液体電解質層,21:第二非液体電解質層となっています。これに対して,最初に検討を行った構造Bは,非液体電解質が第一非液体電解質層(20) のみの単層型の構造となっています。

 

非液体電解質の利点一つに,液体系の電解質とは違って,積層構造を形成できるという点があります。単層非液体電解質型の構造Bで実験を始めて,充放電特性を向上させるために様々な積層構造を試したところ,現在のところ,構造Aにたどり着いています。

Fig.1 積層型電解質二次電池(構造A)および単層型電解質二次電池(構造B)の断面の模式図.


構造Aでは,第一非液体電解質層(20)と第二非液体電解質層(21)に含まれるイオン種を違えることが可能です。例えば,第一非液体電解質(20)としては,ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ化カリウム等を分散させたものを用い,第二非液体電解質(21)としては,PVAに塩化リチウム等を分散させたものを用いた場合には,正極のカーボン材料の層間へのリチウムイオンLiのインタカレーションが可能となります。

 

このような系は,液体電解質ではなく,非液体電解質の特徴を生かした積層型構造で可能となるもので,Mg2+イオンがカーボン材料正極の層間へのインターカレーションを起こしづらいという問題解決に対するアプローチの一つになると思われます。