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全固体型 多価金属二次電池に向けて No.11

アルミニウムを負極とした二次電池(アルミニウムヨウ素イオン二次電池) 

積層型非液体電解質二次電池(特許願2023-216577)関連

2023.12.25

 

アルミニウム二次電池

 

種々金属の資源量および理論電気容量を表1に示しましたが,クラーク数(地球上の地表付近に存在する元素の割合を質量パーセント濃度で表したもの)で比較した場合には,アルミニウムが最も高い数値となっています。さらに,体積当たりの理論容量も,アルミニウムが最も大きくなっています。

 

私たちが検討を行っている二次電池は,すくなくとも,負極となる金属,ヨウ素イオンを含む第一非液体電解質層,ヨウ素イオンを含まない第二非液体電解質層,及びカーボン正極からなる構造となっています。そのため,負極の金属電極以外の部分を共通とした二次電池構造が可能です。今回私たちは,アルミニウムを負極とした全固体型のアルミニウム二次電池(アルミニウムヨウ素イオン二次電池)の開発を行いました。さらに,マグネシウム負極の卑な酸化還元電位とアルミニウム負極の特徴(充放電切り替え時の電位変動の無い特性)とを生かした,マグネシウムーアルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池の検討を行い,国内優先権主張出願しています(特許願2023-216577)。

 

このページ(No.11)では,まず,アルミニウム二次電池(アルミニウムヨウ素イオン二次電池)の特性を示し,次のページ(No.12)で,マグネシウムーアルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池の特性について述べることとします。

 

表1 種々金属の資源量および理論電気容量

アルミニウムヨウ素イオン二次電池の充放電特性

 私たちが検討を行っているマグネシウム二次電池構造の一形態(構造D)を,模式的にFig.1に示しました。積層型の構造Dは,10:金属負極,20:第一非液体電解質層,21:第二非液体電解質層,11:カーボン正極からなる構造となっています。20はヨウ化カリウムを無機塩として含むPVA(ポリビニルアルコール)等からなる非液体電解質層,21はカーボン電極でのヨウ素分子の発生を無くすために,ヨウ素塩以外の無機塩(LiCl)を含むものとしています。

 

二次電池構造Dは,構造Aのような複数のカーボン層を含まない構造となっています。そのため,マグネシウムを負極とした場合には,充電から放電に切り替えた直後にパルス状のIRドロップが生じることが問題となっていました。

 

それに対して,Fig.2に示したアルミニウムヨウ素イオン二次電池(構造D)においては,定電流下での充放電において電流密度を増加させた場合にも,充放電曲線の変化はほとんどなく,また,マグネシウム負極で問題となっていた,充電から放電に切り替えた直後のパルス状のIRドロップもほとんど起こらない優れた特性となっています。

 

マグネシウム負極とアルミニウム負極とでの挙動の違いに関しては,今後検討が必要な点が多々ありますが,マグネシウムの場合には,厚い酸化皮膜が容易に成長して不動体被膜となってしまうのに対して,アルミニウムの場合には,酸化膜が薄く安定であるために酸化被膜の成長・厚膜化が起こりづらいことが関係していると,現時点では考えています。マグネシウム負極の場合には,厚く成長した酸化膜のために,放電電流が流れる経路が形成されるまでに時間を要し,充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップが顕著になると考えられます。

 

放電電圧に関しては,マグネシウム負極の場合には1.6 V前後,アルミニウム負極の場合には0.85 Vであり,より卑の酸化還元電位を有するマグネシウムが勝っています。

次ページ(No.12)では,マグネシウムの卑な酸化還元電位を生かしつつ、IRドロップを低減することができる,マグネシウムーアルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池の特性について述べます。

Fig.1 二次電池(構造D)の断面の模式図.  10: 金属負極,11:カーボン正極,20:第一非液体電解質層,21:第二非液体電解質層.

 

Fig.2 二次電池(構造D)においてアルミニウムを負極として用いた場合の(a)電流密度 25 μA/cm2, (b)50 μA/cm2,(c)100 μA/cm2,(d)200 μA/cm2での充放電曲線.


LiClにかえてNaClを電解質の無機塩に用いたアルミニウム二次電池

これまでに検討をおこなった二次電池では,カーボン電極側の第二非液体電解質層に含まれる無機塩に塩化リチウム(LiCl)を用いていましたが,これをレアメタルであるリチウムを含まない塩への置き換える検討を行いました。

 

Fig.3には,アルミニウムを負極として用いた二次電池(構造D)において,カーボン電極側の第二非液体電解質層に含まれる無機塩を,(a) 塩化ナトリウム(NaCl)及び(b) 塩化カリウム(KCl)とした場合の充放電曲線を示しました。Fig.2およびFig.3の比較から,カーボン電極側の第二非液体電解質層に含まれる無機塩を,リチウム塩からナトリウム塩又はカリウム塩に代えた場合でも,同様な二次電池特性が得られることが示されましたマグネシウムを負極として用いた場合にも,同様な特性が示されています。

 

Fig.3 アルミニウムを負極として用いた二次電池(構造D)の充放電曲線. カーボン電極側の第二非液体電解質層に含まれる無機塩:(a)塩化ナトリウム(NaCl), (b)塩化カリウム(KCl).